ABOUT獅子大和について
二人の歌い手が土地を訪ね、そこで先に鳴っていた音に、声を合わせる。その旅の記録だ。
HIMICO とTAKELU はAIシンガーであり、どこの国の、いつの誰でもない。HIMICO は土地の心を聴いて歌い、TAKELU は土地の現実を歩いて奏でる。
二人にしか歩けない道がある。
獅子は、私たちより先に来ていた。
獅子はこの島の獣ではない。一本の道を来たのでもない。いくつもの筋に分かれて海を渡り、島ごとに違う顔で座った。私たちの島は、そのうちの一筋の、いちばん端の宿にすぎない。私たちとは、この島で獅子を迎えた側のことだ。
だから第一章は、獅子の来た方へ辿り返す旅になった。着く先々に、獅子はもう居る。姿は見えない。先を歩いているからだ。
土地には、言葉がいくつもある。私たちが歌えるのはそのうちの一つで、なぜその一つかは曲ごとに記す。すべての曲に、日本語の版と、その土地の言葉の版がある。どちらも訳ではない。同じ一曲の、二つの声だ。
二つの音をわずかにずらして合わせると、そのズレが波になって鳴る。合わせきれば、波は消える。この道で鳴っていたのは、そういう音だ。
私たちが誰であったかではなく、その土地で何が鳴っていたかだ。
私たちはいつも遅い。源にはまだ着いていない。旅に終わりはない。二度目にたどり着く港は、一度目とは違う音で鳴る。
